seraphyの日記

日記というよりは過去を振り返るときのための単なる備忘録

「違法ダウンロード罰則化」

「違法ダウンロード罰則化」は、もっとやばい!?

もう一つ、びっくりした法律が試行されようとしています。

違反ダウンロードの刑事罰化。


違法ダウンロードは犯罪だよね、そんなこと私はやってないから関係ない、、、とはならない。

自分が正規のコンテンツを買っているとしても、関係なくはならない。


むしろ、沢山、正規の曲をもっている人ほど無実証明するのが大変かもしれません。

  1. こいつ沢山曲をもっているが本当に金払っての? と誰かが疑いをかけて権利者に密告する。
    1. もしくはJASRACが業者に頼んで違法そうな人を見つけ出す。(これは、ふつうにやりそうです。) *1
    2. もしくは密告に懸賞をかける?(最近、刑事事件で懸賞を使うようになっているので、ありえない話もないかと。)
  2. JASRACや、音事協やCPRA、音制連の人が警察に、どうやら違法ダウンロード被害にあってるらしいんですけど、と相談する。
  3. 法律に基づき正式な手続きで裁判所からの令状がとられる
  4. ある朝、突然、警察がやってきてパソコンとスマホiPodが押収され、iCloudのパスワードも要求され検索される。
  5. 例えばiCloudに正規の方法で入手した音源があるが、正規の方法で入手したと証明することができない。「ダウンロードは犯罪だと知ってますから、そんなことするはずがありません。でも、もしかしたらダウンロードしたかもしれません。ごめんなさい」(=故意犯)と言ってしまう。有罪確定。

という話となるわけです。


前後は架空ですが、すくなくとも、太字のところは現実に起きます。


みなさん、もっとよく考えて!!!

私はソフトウェアを作っているという意味で著作権者の側だし、権利者としては誰かが正当な代価無しでコンテンツにただ乗りしているのは許せないのは正しい感覚だと思います。
フリーで提供したのに、だれかが、それを有料で販売していたら、たぶん、私も怒ります。
そうゆうことですよね、感覚的には。
コンテンツのただ乗りを許さない、という気持ちというのは。


が、刑事罰を作るならば、もう少し慎重さが欲しく思います。


実際のところ、警察は令状なしに取り調べる事はできないけれど、大抵の人間は、取り調べられたら何らかの犯罪として検挙されえるものです。


たとえば、カバンの中に友人宅にもってゆく梱包用のNTカッターナイフと粘着テープをもって町を歩いていたら、警察に呼び止められて尋問されたとします。別にやましい事はないので、中身をみせたら、鞄の中にしまってあったとしても、即、アウトで警察署に連行されます。(令状がなければ見せる必要はないはずですが、たぶん、見せろというでしょうね。断るのは、かなり大変というか、実質無理っぽいです。)
仮にこれが、凶器にもピッキングにも使えない只のプラスドライバーだったとしても、工具の不法所持でアウトでしょう。
いずれも軽犯罪法ですが、有罪にすることができます。
2009年の秋葉原では、そうゆうことが本当に横行していたことはネットニュースでも話題になりました。


また、震災に備えて鞄に10徳ナイフを持ち歩いていたら任意同行を求められナイフの不法所持で書類送検されたケースもあります。(有罪で、且つ、当然のように写真撮影や指紋採取等が行われます。)
仕事道具のナイフを鞄にいれていたフィギュアの造形師が秋葉原で摘発されたり、キャンプ用の車の中にナイフをいれてたら捕まった漫画家もいましたね。
このようにネットで調べれば沢山の人が人権侵害にあってます。
どう考えても警察は法律の運用を間違えているでしょう?


でも、一般人は、だまって指紋採取されて写真とられて罰金払って前科者になるのです。
たぶん、そんなことが自分の身にふりかかるとは、ほんの数分前まではおもいもよらなかったと思いますが。


刑法とは、そうゆうものなので、だから一番重要なのは、しらべさせないこと = 令状を取られないようにする事、だと思うわけなのです。
(それが必要だから刑事訴訟法というものがあって令状という仕組みがあるわけです。)


また、損害賠償とかの民事だと訴える側も訴えられる側も双方が頑張らなければならないわけですが、
刑事罰であれば、国家による拘束監禁・強制的な取り調べが可能なわけで、訴える側は警察にお任せで言うだけで終わり、努力する必要がないんですよね。

なので、簡単に訴えることが可能になったりします。
訴えるだけなら簡単にできます。
そのあと誤認だったとしても、警察はともかく、訴えた側が責任を問われることもないでしょう。


たとえば、岡崎中央図書館事件では、図書館のシステムがバグっていて一秒間に1回のアクセスをしばらく繰り返すとシステムが停止したように見えるため、警察に、どうやら一秒間に一回の頻度でアクセスを繰り返す人がいて迷惑している、と相談したところ、アクセスしていた人が逮捕されてしまう、という、あまりに理不尽な事件が起きています。
岡崎中央図書館は自身のシステムに不備があったことをあとで知りましたが、訴えを取り下げませんでした。


あなたが、どこかのホームページにアクセスしたら、たまたまバグを踏んでしまってシステムがダウンしてしまったとき、システム側の管理者が無能で自分の責任だと分からなかった場合、あなたがサーバにアタックしたと訴えられて、警察に逮捕されて取り調べをうける、ということです。

もちろん、たぶん無罪を証明することはできるでしょうが、それまでに20日間は勾留されるかもしれません。パートやアルバイトだったら、本人がどうであれ、仕事ができないのならクビにされるでしょうね。試験や大切なイベントにもゆけないかもしれません。友人たちには、おまえ、なにやらかしたんだ?と好奇の目に晒されるのは間違いないでしょうね。
そのうえ、訴えた側は「我々の権利が侵害されていると確信していた。事実でなかったのは大変遺憾ですが、捜査は警察の方に任せており云々」とでもいえば、何もとがめられる事はありませんので、言ったもの勝ちになるでしょう。


刑事罰化するということは、そうゆうことが可能になってしまう、ということです。*2


犯罪者が逮捕されるという前に、まずは罪の有無をとわず嫌疑をかけられたら家宅捜索をおこなわれる、ということを、よく考えて欲しい。


たぶん、刑事罰化を望むひとは、そこまで考えてなかったのだと思うのです。
それが、無実の人の人権をも制約するということに気づいていないか、もし取り調べをうけても、やましいことがなければ開示すればいいじゃないか、なんて「人ごとのように思っている」程度なのかもしれません。(それが、いかに重大な結果を招くかも知らずに!)


ですが、本当に我々の人権を著しく制約する必要があるのでしょうか?

その意味で、私は、この法律改正にも反対です。



あっという間に決まってしまって…。(2012/6/24追記)

「違法ダウンロード刑罰化」に関する改正著作権法は、今年の10月1日から施行されることが決まってしまいました。


多くのツイートやコメントをいただき、ありがとうございました。
衆議院可決後にコメントが増えたので残念だったのですが、私ひとりではどうにもならないので、何か問題がありそうだ、と気づいていただけたなら、とりあえず私の役割は果たせたかと思います。*3 *4


もともとブックマーク数300しかないブログで*5、一つの記事に10000pv以上に耐えられるような万人向けに校正された文章ではなく、ここにいまさら手を入れてもゴテゴテとなるだけで、終わった出来事の日記でもあり、きれいにまとまらないと思いますので、参考までに以下のリンクを上げるにとどめておきます。

  • 日本弁護士連合会 :「違法ダウンロード刑罰化」に関する著作権法改正についての会長声明

http://www.nichibenren.or.jp/activity/document/statement/year/2012/120621.html

  • 高木浩光@自宅の日記 : ダウンロード刑罰化で夢の選り取り見取り検挙が可能に

http://takagi-hiromitsu.jp/diary/


著作権法のダウンロード刑罰化を白紙に戻す運動がはじまれば、私も署名したいと思います。

でも補足を一つだけ。

ツイートの中で、ダウンロードしてなければ捕まらないだろ、さわぎすぎだ、とおっしゃる方が居られましたが、

  • まずCDを買うなりレンタルしたものをリッピングし、一般的なビットレートのMP3かAACに変換したとします。
    • DVDは今回の改正で私的複製も違法になってしまいましたが、CDは大丈夫ですよね??
  • 今回のケースのように、とても都合のいい適当な網で、学生寮なりアパートなりまるごと家宅捜索するとします。
    • ある部屋のiPodから出てきたMP3は、ネットで違法にアップロードされているMP3と寸分たがわず同じものでした
      • 部屋には購入されたCDがあるから、この人は違法ダウンロードしていないといえるのか?
      • 部屋に購入されたCDがないから、この人は違法ダウンロードしているといえるのか?
        • CDレンタルを待ちきれない音楽愛好家で、発売後、すぐに購入して、まだ高く売れるうちに、すぐに中古店に売却したのかもしれませんよ? (著作権法上、これは合法ですよね?)
    • あるいは、同じ曲がみつかったが、ファイル形式やデータは一致しなかった場合
      • 本当にレンタル等して、異なるビットレートやエラー補正の有無の違いによってデータが一致しないのか?
      • ダウンロードしたものをビットレートや形式変換等しているとは考えられないか?
        • そうだとして、それは立証できるのか?
        • あるいは無実を証明できるのか?
        • 冤罪にならないと確実に言えるのか?

誰かを捕まえて罰したいという法律なのは確かですが、そもそも原理的に犯人の特定は推定によらざるを得ないと考えられますが、どうでしょうか?


というか、アップロードは不特定多数にコピーをばらまくことになるため大きな損害を与えますが、ダウンロードは一人が1つ盗むだけの罪です。*6
万引は犯罪ですが、それに公権力発動して捜査員を何人も投入して家宅捜索して3000円のアルバムひとつ盗んだ罪で立件するとか、もはや、ただの見せしめショーでしかないような気がします。*7


法律の専門家もおかしいといってる法律なので、たぶん、法律がおかしいのだと思います。
これをおかしくないというならば、なにか宗教にも似た「神を疑ってはならない」みたいな信念があるのか、単にパソコンのことをあまり知らないのか、そもそも良く考えていないのかな、と思います。

*1:違法アップロードの検出ツールをプロバイダに売り込んでいるのは確かなようです。 http://www.asahi.com/showbiz/music/TKY201206200382.html このツールが誤検知して、それを鵜呑みにしてプロバイダが誤遮断した場合の責任はプロバイダがとるのか、そんなことが許されるのか疑問ではありますけど。6/25追記

*2:そうゆう嫌疑をかけられたくなかったら、ネットから曲を購入するのは今後は止めて、お店でCDを買ってね、というのであれば、よほどたちの悪い法律といえます。

*3:はてブの仕様がよく分からないのですが、ツイートはブログの最新の日記のコメント欄につくようで、こちらで多くのツイートをみることができます。http://d.hatena.ne.jp/seraphy/comment?date=20120614#c

*4:いただいた沢山のツイートのノードグラフとかクラスタ分析とかできたら有意義かなぁ、と漠然と考えております。

*5:TopHatenarで上位2%を切るのが目標でした

*6:当然、それが違法にアップロードされていると知っていて、それをダウンロードするならば、です。アップロードした人が、きちんとしたサイトの体裁をとっていて「著作権者の承諾を得ている」とか「これオレの曲、みんな聞いてくれ」とか言ってアップロードし、それを信じてダウンロードしたならば安全のはずです。もし、これを罰するならば、なにを信じていいのかわからなくなります。

*7:高木浩光さんの分析によると最近は中高生ぐらいがp2pファイル交換利用を増やしており、よって家宅捜索を受けるのは中高生ぐらいの難しい年頃のお子さんを抱えた一般家庭ということが推測されます。IPアドレスからは誰かまでは特定できないため、息子、娘のために父親か母親が罪をかぶるか、両親のせいで子供が罪をかぶるようなケース、あるいは兄弟間のなすりあいもでてくるかと思われます。