その中の6時間ばかりの抜粋
13:15 GDC2006の概要とIGDAアップデート
GDCってナンですか?
会員数が1万人を超えたっていわれてもピンとこないや。
でもトータル8000人ぐらいは西洋人で、日本人は200人とかいってたな。
本題とは関係ないけど、使っていたマインドマップみたいなツールが、いいなー、とか思った。
タダだったら欲スィ。数万円するなら自分でツクりたい。
遅刻していったので、最初のほうはわからない。
なんとなく雰囲気は分かったけど。
ゲーム・クリエータたちにとって、日本というブランドは、まだ健在であることなどが印象的だった。
そんなものは、とっくに廃れているかと思ったが。
しかし、他方、売り上げ的には、日本のソフトは、そんなでもないというので、かなり微妙。
たぶん、日本のゲームに代表される、カワイイとか萌え系のゲームは外国からみると「浮世絵」的な存在なのだろうなぁ、とか思ったり。
クリエーターたちからリスペクト、インスパイアされる存在ではあるが、それ自身が大衆に受け入れられるほど一般化しているわけではない、ということか。
13:45 GDC2006の感想、およびゲーム内経済学について
ゲーム内経済学とは、オンラインゲーム等でアイテム売買するような仮想経済の世界でのテーマ。
聞いたところによると、ゲーム開発者は、経済学の初歩(101個のルール)のような話しでも、すごく興味をもっていたというが、講演者は経済学専門らしくて、つっこんだ議論がなくて残念だったとか言ってた気がする。
どうやら、こっちの系統は韓国・台湾などのアジアが先行しているらしく、欧米人にはピンとこないらしい。
アイテムを購入する = 強い武器を買う、という短絡的な発想になるらしい。たとえば、自分のキャラクターをデコレートするためのアクセサリなどに値段がつくという発想がないらしい。
しかし、他方、おもしろいな、と思ったのは「フェアネス」が非常に重要視されるらしくて、なにがフェアであるのかをはっきりとコミュニティと合意をつくってゆかねばならないという点は強く印象に残った。
Second Lifeというオンラインゲームのことも紹介していたように思うが、Mixiとの類似点も指摘していたように思うが、これは最近読んだ「記憶のゆくたて」(東京大学出版局だったか?)にある、ユーザとともに成長することが重要だという指摘に通ずるものがあると思った。
また、その中の意見で、スポーツがナントカ級で区分されているように、レベルを上げたプレイヤーは、同じクラスのプレイヤーとしか戦うべきではない、という意見もあったとかで、講演者はヘンな意見だという感想だったようだが、オレ的には、それも斬新な発想じゃないかなー、とか思った。
総合的な印象としては、やはり「複雑系」の世界なのだろう、という印象。もはやユーザー数が数十万を超えるとマクロ経済の世界になるわけで、個々人がどんな判断をするのか個別にトレースすることはできないが、総合的に、どんなふうに発展してゆくのかは管理可能ではないかな、と感じた。
14:30 Direct3D 10と物理エンジン最新動向
(貧乏なので)3Dゲームをしないと心に誓った私は、ちょうど2000年前後の3Dレンダリングにチップメーカが力を入れ始めたころから2Dだけでいいよ、と思いつつ避けてきたのだが、
最近のものは、本当に「グラフィックス用プロセッサ」で、CPUと比較しても処理能力は数倍上高いのね。
CPUの単価よりも高いのはしょぅがないか、と思った。
オレが買っても意味ないというのも、よく分かった。(前からわかってたけど。)
で、最近では、この3次元の複雑な計算をバリバリこなすGPUの力を、単なる描画ではなくて、実際にゲーム中に使う物理シュミレーションの計算能力として使おうとしはじめている、という話しを聞いて、なるほど、それは正しいよな、とか思った。これを使うと、PCI-Exバスで古いくなったカードと2枚ざしとかにしても、片方はGPUの演算能力として使うことができるので無駄もない、とか。
一方、PCIバスに刺すタイプのGPUもあるらしくて、これも一昔前に戻ったような印象だったな。昔は浮動小数点の計算はCPUのとなりにくつっけるコプロセッサが必要で、これがないマシンではエミュレーションしてたんだよね。それの3D版ってところですか。
そのかわり、デモはすごかったな。空き缶1万個ぐらいのオブジェクトが全部物理シュミレーションされていて、これがパソコン上でリアルタイムに計算できるかと思ったら、すごいなぁ、と見ているしかなかったね。
専門家じゃないので、OpenGLのチームがどうのこう、シェーディング言語がどうのこうのとか言われてもサッパリですが。
15:15 休憩(30分)
15:45 開発の金言
ざっくりと思ったことは、ゲーム業界も最近流行りのアジャイル/XP的なプロセスで進めているようだな、ということ。でも、これを講演者は「XP」とか「アジャイル」という言葉を使わず、「これは、なんだか日本的ですねー」とか言っているところに違和感を感じた。多分、日本のマネではなく、Smalltalkerのケント・ベックが提唱したXPのブームが3年前ぐらいにあって、それがゲーム業界にも普及した、ということだと思うのよ。日本の小規模ゲーム会社の開発手法はよく知らないが、ウワサに聞くかぎりでは、それは形式的手法を持たない、ただの人にディペンドした開発 + アドホック開発だと思うのよ。
言い過ぎかもしれないけどね。
ただ、XBox360については、興味深い話が聞けたと思う。
XBox360の米国マイクロソフトは非常にゲーム業界を理解しており、実際、米国での売りゆきは悪くないらしい。(ただし、生産が追いつかないため販売台数は、それほどでもないらしいが。)対する日本マイクロソフトは、ゲーム業界のことを全然しらなくてダメだと言っていた。
XBox360はHD(ハイデフ)がウリであるが、ピクセルにして1万、従来の4倍の画素数をもっているが、レンダリングエンジン等は従来の4倍の性能をもっているわけではなく、HDを活かしたゲームを作るのは至難であるとのこと。グランツーリスモを作っているメーカーの人は、解像度を下げても1ピクセルごとに処理をしたほうがクオリティが高いものができるんじゃあるまいか、とか言っていたらしい。
うーむ。XBox360が売れるだけの潜在ポテンシャルがあるという事実を知ったということ、しかし、HDを活かすためにはハードの性能がショボイという事実を知れた、ということは意味があったと思う。
そこでの開発で、「大志を抱け、しかし、抱きすぎるな」などというのは格言だと思った。新しい技術を使った開発では、「古いものに囚われずに」大志を抱くことは重要である。が、しかし、地に足をつけた地道な方法によってしか実現することはできないのだから、「浮かれるな」ということであろう。
そして「次からは、もっとうまくやれる」と結ぶ。これは講演名もコメントしていたが、これは強みだ。講演名はXBox360とPS3との対比で、PS3がリリースされたころにはXBox360開発チームは既に2週目に入っており、技術的リスクも知り尽くしている強みがある、ということを示唆していたが、これは特定のゲーム機にかぎらず、どのような新しいプラットフォームでもいえることだろう。
16:15 ゲームデザイナーのための次世代キャラクターアニメーション
ある意味、もっとも技術的ネタといえる講演だったと思う。
3Dキャラクターは当然手足のパーツが独立して動くわけだが、それらをスムーズに動かすためにどうしたらよいのか?という点の議論について語ったものである。
キャラクターの仕草や表情といったものは、作品のクオリティを上げる上で絶対に魅力的な要素になる。(キャラクターのクセなどが表現できれば絶妙じゃないか、と。)
しかし、ゲームはインタラクティブに進められるものであるからダイナミックに自然な動きができなければならない。
これを行うために、物理シュミレーションによらず、従来のトレース的手法を用いつつ動的にパターン照合して、もっとも自然につながる動きを選択してアニメーションさせる、という方法について語られていた。
たしかに、この分野はシェーディング等々の「世界の見え方」よりも、じつは、もっとゲーム性にとって重要な部分ではないか、とは感じた。
専門外なので他人ごとだけどね。
ミドルウェアの話もあったかもしれないが、私にとっては、どーでもいいことなので省略。いや、しかし、気になることを言っていたような気がする。
欧米のゲームはミドルウェアやフレームワークが多用されているようで生産性という点からは重要かもしれないが、しかし、その結果、どのゲームも似たようなものになっているのではないか、という点について指摘していた気がする。
私も、そう思った。最近、ノベルゲームを支援するツールを作るとすれば、シナリオを管理する部分は共通化できそうだが、ゲームのシステムなどをフレームワーク化することはオリジナリティを損なうため望ましくないだろうな、とは思っていたところだった。
17:00 パネルディスカッション
まあ、それぞれ話がかみ合わなかったり進行上の問題はあったように思うが、すでに話したことの繰返しというところか。
しかし、ここで出た重要な話として、「次世代機」と呼ばれるものは、従来とことなり、「日本製」ではない、という点について懸念を示しておられたように思う。
なるほど。
たしかに勝手はちがってくるだろう。
情報の入り方もかわるかもしれない。
アメリカ人は「ブレゼンテーション」がうまく、ついでに「パブリッシュすること」も上手だという。
書籍販売コーナーにゆくと、昨年だけで50冊あまりのゲーム開発の関連書籍が出版されており、日本で翻訳されたのは、そのうちの数冊しかない。また日本において、(まともな)ゲーム開発本は出版されていない、という。
私が懸念することは、MSJやMSDNが翻訳されて日本に入ってくるまで半年のタイムラグがあったように、英語の出来ない人は最新情報を入手するだけでも困難だったわけだが、MSJもMSDNMagazineも休刊してしまって、現在では英語の分かる人じゃないと、まともな情報源がとれなくなってしまっている。
C++やオブジェクト指向関連の翻訳権利本がトッパンの出版業務からの撤退に伴って本屋から消えてしまったことが日本のソフトウェア業界にとって不幸な歴史となってしまったことのように、最新のゲーム開発動向について主戦場がアメリカになってしまうと現在のお寒い出版事情では日本の開発者は、かなり不利になるのではないのか、と思った。