seraphyの日記

日記というよりは過去を振り返るときのための単なる備忘録

世代の断絶

「日経ものづくり」などを読むと、製造業では2007年問題に大企業を中心に取り組みをはじめているらしい。しかし、一方、全社員に占める60歳人口の比率が少ない中小企業では、あまり問題とは感じていないらしい。
2007年問題とは、さまざまなノウハウをもった団塊の世代が抜ける時期にあたり、第一線で活躍されている、これらの熟練した労働者のノウハウが定年退職と同時に一斉に抜けて、もし、そのとき下の世代にノウハウが引き継がれていない場合に大きな問題となる可能性がある。
とはいえ、本当に人にディペンドしている、たとえば工作機械におけるテーブルを磨く熟練工とか、そうゆう職人には定年退職というものは現在でも実質的になくて、定年退職後も嘱託社員として働いていたりするので、コアな部分の技術の喪失ということではないのだろう。(この傾向は中小企業ほど大きいかもしれない。)
しかし、興味深い指摘もある。たとえば、今年9月に発行された日科技連の小冊子「クオリティワン―ソフトウェア品質のための総合情報誌」には特集として「今そこにあるソフトウェア品質クライシス」と「ベストプラクティスの過去、未来」と題された記事がある。実にうまい構成で、まず問題を提起し、そして、そこに、すべてのナゾ解きがある。
私がいるIT業界では、汎用機→クライアントサーバ→ウェブ、へとメインステージが変化し、また、そのときに使われる技術も、COBOLといったドメインスペシフィックな言語から、UNIX系のC/C++言語へと移行し、プロセスもウォーターフォール型からラピッド系へ、プログラミングのスタイルも単純手続き型からオブジェクト指向へと移行してきた。
この時代の移り変わりで、旧来のノウハウに適合できない部分が少なからず発生し、また、新しく学ばなければならないことも発生する。
このため、「古い職人」は時代についてゆけていない部分が少なからず発生し、まだ何もスタイルを確立していない若手が先行する、という現象が、時代がかわるたびに繰り返されてきた。
昨今、コンピュータが、一層、生活の身近なものになるにつれて、ソフトウェアな品質の危機が大きくクローズアップされている。たが、これは新しい問題ではない。歴史を紐解けばあきらかで、これらは単純に昔からある問題を繰り返しているだけである。
どの時代にも、このクライシスはあり、そして、解決方法は確定されてきた。
問題は時代が変わるときに、古いテクノロジーを捨てると同時に、その重要なノウハウをも捨てて、つまり、若手に引き継ぐことなく忘れてしまったことにある。
これは、むしろ我々にとっては福音のように聞こえる。
前世代が遭遇したことのない、対処方法のないフェスティムのような、あるいは実装石のような感染性が強いナゾの同化物体に対峙させられているようなものではないのだ。
実は、すでに防疫方法も分かっており、封じ込めることは可能なのである。
それは、2007年に引退する人たちの経験であり、1980年代に発行された様々な古い書籍の中に埋もれているのであろう。
少し光が見えてきた気がする。